あえて、ドリップバッグという選択


暮らしの発想

スペシャルティコーヒーが日常的に楽しめる時代。豆の個性や焙煎の技術はかつてないほど洗練され、誰もが自宅で高品質な一杯を淹れられるようになりました。そんな中で、あえてドリップバッグを選ぶ。それは一見シンプルでありながら、とても奥深い選択なのかもしれません。

ドリップバッグは、1990年代の日本で生まれました。挽きたての香りをそのままに、いつでもどこでも、至福の一杯を淹れられるように。日常の延長にある発想が、いつの間にか文化になり、そしていまでは世界へと広がっています。


開けた瞬間に香る鮮度

封を開けた瞬間、ふわりと立ち上がる香りに驚かされる。焙煎後の豆の香りが、窒素とともに密閉されるため、酸化せず鮮度を保ちます。湿度に左右されやすいキャンプや山間部でも、まるで淹れたてのような香りを再現。これはクセになるわけだ。


世界に広がる、静かな日本のコーヒー文化

今では海外でも、ドリップバッグは“Japanese pour-over”の延長にあるものとして受け入れられています。特別な器具を必要とせず、紙と粉とお湯だけで完成するというシンプルさは、まさにより少なく、しかし豊かに生きる視点。使い捨ての道具でありながら、どこか儀式的で、手を添える行為としての美しさもある。所作そのものが評価され、小さな紙の枠に、日本の感性と機能美が宿っています。


自然のなかで、確かな味わいを

アウトドアでは急な天気の変化は日常茶飯事。朝露に濡れたテントや、湿った空気、そんな環境でも、ドリップバッグの味わいは揺らぎません。豆の量と挽き目が一定の状態で保たれているため、湯さえあれば安定した抽出ができる。ミルやドリッパーを持たない軽やかさは、旅支度の質を変えてくれます。普段は豆を挽く人であっても、あえてドリップバッグだけを持って出かけてみることで、見える世界もあるというもの。不思議な余白が生まれ、目の前に広がる景観と香りに素直であるという選択です。


Glitch Coffee & Roasters の一杯を、景色とともに

世界のスペシャルティコーヒーシーンから注目を集めている、東京のGlitch Coffee & Roasters。その味わいがドリップバッグになり、自然の中でも楽しめるというのは、少し贅沢で、どこか現代的でもあります。のんびり景観を眺め、街で飲むのとは違う表情を見せる。ドリップバッグは便利な製品ではなく、景観と本来の味わい、その鮮度をそっと繋ぐ存在として。

Glitch Coffee & Roasters / Drip Bag set of 5 - Colombia Huila Oporapa

カナダ・バンクーバーのキャンプにて、朝食にドリップバッグを

朝食後、自宅にて手軽に


焚き火のそばでも、朝の窓辺でも、湯を注ぐだけで立ち上がる香り。その小さな袋は、ただの簡易的な道具ではなく、時間の質を選ぶための方法なのかもしれません。技術が進み、どこでも質の高いコーヒーが飲めるようになった今だからこそ、あえてドリップバッグを選ぶという行為は、静かだけれど確かな意味があります。

豊かさとは、何かを足すことではなく、必要なものだけを連れていくこと。ドリップバッグは、そのささやかな証のひとつかもしれませんね。

Exclusive Launch / Centre Folding Table