Rab / Outpost System



シュラフの最適解


沼からの脱出 

Rabの取り扱いをスタートし年が経ちました。封筒型のダウン「Outpost」シリーズの発表を本国のニュースで知り、日本では展開予定なく無理を言って取り寄せてもらった思い入れのあるプロダクトです。さまざまな環境で体験し、今となっては欠かせない道具となりました。 

四季や家族構成など、シュラフはキャンプ道具の中でもオススメが一番難しいもののひとつです。特に小さい子供がいて、ある程度寒い時期までカバーするとなるとより複雑。オートキャンプでは、パッキングのサイズはそこまでシビアになる必要はありませんが、子供が二人いるとシュラフだけでも結構なボリュームに。イギリスのブランド、Rabのスリーピングシステムはやはり最適解でした。



Rab というブランド


Rab 1981年、ロバート・キャリントンというイギリスのクライマーが設立したブランドで、世界中の極寒環境やアルパインクライミング向けに、信頼性の高いハイクオリティーなアイテムを産み出している。特にダウンや化繊などのインサレーション(中綿)系が得意で、最初のプロダクトはロバート自身が自宅の屋根裏で自身が縫ったダウンのシュラフとのこと。ラインナップとしては、本格派のブランドらしく、用途と目的が明確なテクニカルなアイテムが多く、シュラフも形状や温度帯のレンジ、ダウンの品質の基準となるFill Powerなどが細かく分かれています。しかし、そんな本格ラインナップの中に、異彩を放つ、独特な立ち位置のアイテムが「Outpost」シリーズです。

 

封筒型のダウン「Outpost」


異彩を放つ封筒型、つまりは高地を目指す登山向けではなく、そしてダウン素材であること。温度帯が、Outpost 3005℃Outpost 500は0まで対応。温度帯の表記は人により体感に差があるため、とても判断しづらいのですが、この2種を組み合わせることで、厳冬期以外は対応できるシステムです。表地は30デニールのPertex® Quantum リサイクルリップストップナイロン、フロロカーボンフリーの環境に配慮されたDWR耐久撥水加工。Rabのラインナップの中でも、完全な廉価版の入門アイテムでもなく、玄人向けのアイテムでもない。むしろどちらもカバーするような懐の深さのあるポジションです。

 

マミー型と封筒型


体に沿った形のマミー型と、封筒型を比べると、マミー型は内部にため込んだ暖かい空気が逃げづらく、寒い時期には一択ですが、窮屈さがあります。一方で封筒型は、内部にゆとりがあるので厳冬期には向かず、構造上フードや首回りがゆるく、熱が逃げやすい。しかし窮屈さはなく、家の布団のように快適に寝れます。実際、家のなかでは、寝具:布団は長方形のものしかないのは、ある種の緩い寝心地の良さを人類が選択してきたからだ、とも言えるでしょう。 

封筒型の弱点である首回りには、暖かい空気を逃さないネックバッフルがついていてドローコードで絞れる。これは厳冬期向けの寝袋もつくる本気メーカーならではの処理。同様にダウンの層が薄くなるサイドファスナー周りにも、バッフルが入っていて抜かりない。さらに、首元に小さなファスナーがあり、鍵などの失くしやすい小さな小物を収納することができる。このあたりも含め、どれも作るには手間とコストもかかるが、そこをコスト優先だけではなく、実用性、機能性にプライオリティを置く姿勢が垣間見えます。

アウトドアにおいて快適に寝ることは、永遠のテーマともいえる最重要課題ですが、条件を加味しつつ質の高い封筒型はベスト。また、あくまでオートキャンプ主体として、道具は軽く少なく合理的に整理しつつも、我慢するほどストイックに切り詰めるのではなく、家的な快適さを確保するバランスがちょうど良い。その意味でもRabの封筒型のダウンはとても気になる存在です。

上下の連結


Outpostは、ファスナーを全開にすることで、オープンキルトとして使えます。温度調節もしやすく、大きなブランケットとして使ったり、結構便利な点はありますが、ここまでは良くある仕様です。面白いのは上下で連結することができること。これは国内メーカーなどでもLRZIPをサイドで連結できる仕様などありますが、上下でできるのは封筒型ならでは。しかも、Outpost 300Outpost 500という異なる温度帯でも連結できる。シュラフをつきつめると背中側のロフトが潰れて機能を果たしていない、という命題に突き当たりますが、Outpostの場合は、体重でロフトが潰れてしまう背中側を薄いOutpost 300にし、反対を厚手のOutpost 500にすることもできる。UL(ウルトラライト)な世界では背中側のダウンは潔くなくすのがスタンダードになりつつありますが、そこまで割り切らないとしても、その日の気温に合わせて、2種の異なる温度帯を組み合わせ対応できるため合理的です。 

重ねてセット


冷え込む日は、2種の異なる温度帯のOutpostを重ねて使用しています。より体にフィットするため冷気を遮断し、封筒型の弱点を軽減。窮屈さのない包まれるような寝心地は、クセになるほど。

一人でも家族でも


さらに、異なる温度帯を組み合わせられるのには他にもメリットがあります。家族全員でキャンプに行くこともあるが、父は一人で友人と行くこともある。となると、シュラフの持ち方としては、父だけは年中行きつつ、家族は時々というパターンが多いのでは。1年を通してキャンプに行くため複数持ち、家族はある程度広い温度帯をカバーしてくれて連結できるものがあればいい。つまり、父用に複数の温度帯を揃えておけば、一人の時は最適な温度帯を選んで使いつつ、子供と行く時は連結して一緒に入るということもできるため、無駄なくシステマティックに構成できます。カップルでも、2人で異なる温度帯をもっておけば、ソロのときはどちらかをもって行き、デュオの時は連結して一緒に入る、というのもいい。幅広い用途に対応できる懐の深いスリーピングシステムです。



自宅でも「Outpost」シリーズを掛け布団として使用していますが、掛け布団よりシュラフの方がダウンの品質が良く、非常に軽くて暖かい。また色味もUKらしい繊細な雰囲気。正方形(210 x 160cm)になり市販の掛け布団カバーも使用できるため、家の寝具:布団として違和感がありません。来客時の掛け布団としてさりげなく使ってもらうにもベストな選択

収納袋に見るRabの思想

 
そんな「着回し」ならぬ「寝回し」が効くこのシュラフですが、収納袋類も秀逸。ダウンシュラフは、湿気に弱いのと羽毛のロフト低下を防ぐため、パッキング用の収納袋とは別に、保管用に通気性の良い大きな袋がついてくることが多い。Rabの収納袋は一目見て、まずかっこいい。色も黒で、通気性の良いコットンと、ポリエステルのハイブリッド素材でできていて作りが良い。形は側面から見ると四角で収納したときに圧倒的に収まりが良い。そして収納時もアイテム名もわかりやすく、美しく表示してある。側面の二箇所だけ強度の高いポリエステルを使用し、適材適所になっていることも抜け目がない。一般的な収納袋の簡易さと比べて、収納袋の底面にはスレに強い素材を配し、その他には蒸れに効く通気性の良い素材を用いるあたり、要するにコストがかかり面倒くさいが、やった方が良いことはきちんとやっている。最もないがしろにされるような収納袋のデザインから、Rabの、設計思想や、プロダクトへの研究姿勢、そして妥協なく実現していく覚悟を感じます。

プロダクトの源流まで


気候変動や環境への配慮について、欧州は日本よりも高い危機意識を持ち、先んじて具体的な対策を行っているが、動物由来の素材への倫理的な配慮も同様に進んでいます。これは国やメーカーだけではなく、その製品を求めるユーザー側の意識が高いこともあると思いますが、ダウン製品についてはRDSResponsible Down Standard)認証というものが一つの重要な指標となっています。RDS認証とは、生きた鳥からの羽毛採取や強制的な餌付けなど、動物に対する不当な扱いを行っていない農場からとれた羽毛であることを保証する国際認証基準。その他にも、餌付けや畜舎の環境、動物が畜舎の外に出られる環境にあるかなど、動物福祉に関する複数の厳格な要件が定められており、認証は全て第三者機関が行っています。すこし目をつむりたくなるような話ではありますが、このような認証があるということは、“そうではないもの”が存在しているという現実があるということ。少なからず自然との関わりを持ち、その豊かさを享受している者としては、選択する場面があれば、やはりより正しいものを選びたい。


ソロ用に複数のタイプもつことで、厳冬期以外のほとんどの場面に適応し、連結することで家族で行くときにも活躍してれる「寝回しの効く」シュラフ。封筒型だがダウンでパッキングサイズは小さく、細部のディティールにも抜かりがないUKメイドのクオリティ。安心感のある機能的で美しい収納。倫理的に処理されたダウン。使っていて気持ちの良いものとして、単純に寝る時だけの機能だけではなく、収納を含めたその前後の体験、さらには原材料まで含めた部分での、トータルでの最高品質が、精神的な意味も含めた心地よさにつながるのだと改めて思ったプロダクトです。

Rabという魅力的なブランドの姿勢が伝わる、まさに最適解のスリーピングシステム。次回はよりハイスペックな「Mythic Ultra」シリーズや、マットレスについてもレビューしたいと思います。



Rab / Outpost System

Outpost 300

Outpost 500

 

wanderoutは「人と自然が共生する社会のための羅針盤となる」ことを目指しスタートしたプロジェクト。Journalでは、プロダクトの紹介やライフスタイルについての記事に加えて、特集として、私達がお手本としたい活動をされている方々にお話を伺い、これからの生き方を学び、みなさんとシェアしていきたいと考えています。

 

 

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